非常災害時にはキャリアのアンテナ基地局が機能停止し、携帯・スマホが不通になることが予想されます。そんな状況下でも力を発揮するのが衛星インターネット。
国内で利用できる衛星インターネットサービスや、運用開始が予定されているサービスはどのようなものがあるのでしょうか。いざという時に強い衛星インターネット。いろいろ調べてみました。
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Starlink(スターリンク)
Starlinkは2025年4月時点の日本国内において、一般ユーザーが利用可能な唯一の衛星ブロードバンドサービスです。2023年時点ですでに約5,000機以上のスターリンク衛星が稼働しており、通信速度は最大100Mbpsに達しています。
Starlinkの衛星インターネットサービスを利用するには専用のアンテナと通信機器が必要。料金プランは利用場所固定のレジデンシャルプラン(6,600円)とモバイル対応のROAMプラン(9,900円)の二択です。ROAMプランは利用しない月を無料にするシステムがあるので非常用に向いているといえます。
法人向けサービスの「Starlink Businness」も提供しており、KDDI(au)やSoftbankも契約しています。
「au Starlink Direct」サービス開始
au(KDDI)は、2025年4月10日に新しいサービス「au Starlink Direct」を開始しました。このサービスは、SpaceXのStarlink衛星を利用して、スマートフォンと衛星との直接通信を可能にするものです。これにより、従来は通信圏外だった山間部や海上でも、空が見える状況であればメッセージの送受信ができるようになります。
サービスの特徴:
対象機種: 対応するスマートフォンは約50機種で、iPhone 14以降のモデルやGoogle Pixel 9シリーズ、Samsung Galaxyの最新モデルなどが含まれています。
利用料金:
現在、利用料金は当面無料で提供され、申し込みも不要です。ユーザーは、対応機種を持っている限り、すぐにサービスを利用開始できます。
機能:
このサービスでは、SMSやRCS、iMessageを通じてメッセージを送受信できるほか、緊急地震速報や津波警報の受信も可能です。2025年夏以降にはデータ通信にも対応する予定です。
利用シーン:
特に、登山や災害時など、通信が困難な状況での利用が期待されています。例えば、登山中に遭難した場合でも、空が見える場所であれば、衛星を介してメッセージを送信し、位置情報を共有することができます。
この新サービスは、KDDIが日本国内での通信エリアを拡大し、より多くのユーザーに安心感を提供するための重要なステップとされています。
AST SpaceMobile
ボーダフォンやベル・カナダ、AT&T、オレンジなど40社を超えるモバイルネットワーク事業者と契約している「AST SpaceMobile」。先行するStarlink社に追いつくべく開発を進めています。日本からは楽天モバイルが出資をしています。
Starlink衛星の約40倍のサイズの高機能な通信衛星を用いて、Starlinkのようなアンテナやハードウェアなしで直接スマートフォンとデータのやり取りができる点が特徴です。
「Rakuten最強衛星サービス」開始(予定)
楽天モバイルは「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」を2026年第4四半期に開始する予定です。このサービスは、AST SpaceMobileの低軌道衛星を利用して、スマートフォンと衛星との直接通信を実現するものです。
サービスの特徴:
ビデオ通話の成功: 楽天モバイルは、2025年4月に日本国内で初めて、標準のスマートフォンを使用した衛星とのビデオ通話に成功しました。この試験は、福島県のゲートウェイ地球局から衛星を介して行われました。
広範囲なカバレッジ:
このサービスは、山間部や離島など、通信が困難な地域でも利用できることを目指しています。特に、日本は自然災害が多いため、緊急時の通信手段としての重要性が高まっています。
競争優位性:
楽天モバイルのサービスは、AST SpaceMobileの大型衛星を使用することで、少ない衛星数で広範囲に強い電波を届けることができるとされています。これにより、他社のサービスと差別化を図っています。
Project Kuiper
米 Amazonの子会社である「Kuiper Systems」が開発を進めている衛星インターネットが「Project Kuiper」(プロジェクト・カイパー)。3200基以上の通信衛星を打ち上げてテストする計画が進められています。
2025年の運用開始を予定していますが、運用当初は固定式のアンテナを使った高速ブロードバンドを計画しており、現在のStarlinkと同じ形態になると思われます。
OneWeb
英Network Access Associates社が提供する衛星通信サービスが「OneWeb」です。2023年時点で軌道上の衛星数が618基に達し、全世界のカバーが可能となりました。下り200Mbps、上り50Mbpsの通信速度を実現しています。
日本からはSoftbankが出資・提携していますが、OneWeb自体の国内での個人向けサービスは提供されていません。
IPSTAR Japan
国内で2009年より衛星通信サービス事業を展開している「IPSTAR」。現在はタイの通信衛星を介して低速ブロードバンドを提供しています。月額7000円プランが最低価格。
まとめ
以上、国内で利用できる衛星インターネットサービスや運用開始が予定されているサービスのまとめでした。
本記事執筆時点で最も実用的な衛星ブロードバンドサービスはStarlinkのROAMプラン。初期費用や月額料金は決して安くありませんが、災害時に備えて用意しておきたい衛星ブロードバンドの筆頭です。
月額9900円のROAMプランなら使わない月は休止させることができるので、いざという時のために準備しておくには最適だと思われます。
スマホのサービスではauが開始した「au Starlink Direct」。契約すればすぐにでも使えます。ただし既存のスマホで利用したい人は対応機種にご注意を。
2026年秋ごろになると「Rakuten最強衛星サービス」がスタートします。これが一番おすすめかもしれません。待ち遠しいです。