大人にこそおすすめしたい絵本。その一つが『満月をまって』という作品です。
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ストーリー
山の木の声を聴き、雪のふる音に耳をすます。父さんはトネリコの木を薄く切ったリボンで頑丈なカゴを編み、満月の夜を待って遠いハドソンの町まで売りに行く。
9歳の誕生日を迎えた”ぼく”は、念願だったハドソン行きに同行することになります。ハドソンの街を見ることができて喜びいっぱいの”ぼく”でしたが、帰り際にハドソンの住人から言われた心無い言葉によって、すっかり打ちのめされてしまいます。
村に帰ってからも心が乱れて、これまでのような気分で父さんたちの手伝いができなくなった”ぼく”。むしゃくしゃした気持ちを抑えきれず、父さんたちがつくったカゴを蹴飛ばして悪態をついていると、ちょうどそこに父さんの仕事仲間のおじさんがやってきて・・・。
風から選ばれたかご作り職人たちの美しい心と、仕事へ真摯に取り組む姿勢を描いた珠玉の作品です。
作品について
2000年3月に亡くなった人気絵本作家クーニーさんの最後の作品になります。
ニューヨーク州ハドソン渓谷の民俗芸術であるバスケット作りに携わる人々の暮らしを、9歳になった少年の視点で描いており、田舎者と揶揄されながらも仕事に誇りをもって取り組んでいこうとする心意気に心打たれる作品です。
作者について
作:メアリー・リン・レイ
アメリカの児童文学家で自然保護活動家、歴史保存活動家。ヴィンタートール博物館で学芸員をした経験があり、アメリカの手工業についての知識が豊富。
20冊以上の著書があり、その年の優れた絵本に送られるシャーロット・ゾロトウ賞を2014年に『Go to Sleep, Little Farm』で、2015年には『Goodnight, Good Dog』で連続受賞。
児童文学界以外でも1989年にニューハンプシャー州自然保護活動家賞を受賞しています。
絵:バーバラ・クーニー
アメリカ人の児童文学作家、イラストレーター。生活感のある牧歌的な情景を描くことで知られています。
『チャンティクリアときつね』で1959年に、『にぐるまひいて』で1980年にコールデコット賞を受賞、『ルピナスさん ― 小さなおばあさんのお話』で1983年に全米図書賞を受賞しています。バーバラ・クーニーさんが在住したメイン州の図書館協会は、優れた児童書を執筆した在住作家に贈られる第1回ルピナス賞を授与。12月12日を”バーバラ・クーニーの日”と制定しました。
訳:掛川 恭子
主に英米の児童文学・絵本の翻訳に携わる翻訳家。キャサリン・M・ペイトンの『フランバーズ屋敷の人びと』やL・M・モンゴメリの『赤毛のアン』シリーズ、P・クームスの『小さな魔女ドリー』シリーズなどの完訳で知られています。
深掘り情報
あとがきによると、”ニューヨーク州ハドソンから遠くないコロンビア郡の山間にかごを作って生計を立てている人たちが居た”とのこと。具体的にはニューイングランド地方の一部で暮らしていたネイティブアメリカン(旧インディアン)のワバナキ(アベナキ)族などが、かご細工高い技術を持っていたそうで、ハドソン博物館などで本物が見られるようです。
関連グッズ
関連施設
関連施設はありません。
作品の感想・口コミ
「”風は見ていて、誰が信用できるかちゃんと知っている”という言葉が心にズンと響く。」
「自然と共に暮らしている人たちの心の素直さと強さ。その理由が少しだけわかったような気がした。」
「物質的には恵まれていても心の貧しい人たちと、最小限の暮らしをしていても心の豊かな人たちがいる。昔も今も、日本でもアメリカでも同じ。」
作品情報
書名 | 満月をまって |
作者等 | 作:メアリー・リン・レイ 絵:バーバラ・クーニー 訳:掛川 恭子 |
出版社 | あすなろ書房 |
発行年月 | 2000年09月 |