大人にこそおすすめしたい絵本。今回紹介する作品は、かこさとしさんの珍作絵本『どろぼうがっこう』です。
このページの目次
ストーリー
”おいのこもり”という名の森にある「どろぼうがっこう」では、世にも名高い”くまさかとらえもん”先生のもとで、かわいいどろぼうの生徒たちが悪いどろぼうになるために勉強をしていました。
みんなはある晩、ねじ回しと出刃包丁を持って夜の10時に集合し、”どろぼうのえんそく”に出発します。行き先は”かねもちむら”。
「お金や宝物を持っていそうな一番大きな屋敷を選ぶんだ!」と先生に言われてどろぼうたちが選んだ家は、もっとも大きくて、昔のお城みたいに番兵がいる凄そうな家・・・。
ぬきあし、さしあし、しのびあしで中へ入り込んだくまさか先生とかわいいどろぼうたち・・・。はたしてお宝やお金を盗み出すことができるのでしょうか・・・。
作品について
『どろぼうがっこう』は、かこさとしさんが1960年頃に子ども会で見せた紙芝居がもとになっています。絵本になったのは紙芝居から13年もあとの1973年です。
また『どろぼうがっこう』から40年たった2013年に発表されたのが『どろぼうがっこう ぜんいんだつごく』と『どろぼうがっこう だいうんどうかい』です。
『どろぼうがっこう』はかこさとしさんの作品の中でも絵のシュールさやストーリーの奇抜さで群を抜いています。あとがきにも記されているように、当時の子ども会で大うけして幾度となくせがまれた紙芝居だとのこと。子どもにとってそれだけ魅力的なコメディーだったのでしょう。
作者について
文・絵:かこさとし
絵本作家で児童文学者のかこさとしさんは東京大学工学部応用化学科出身の工学博士。昭和電工の研究所勤務のかたわらセツルメント運動や児童会活動を通じて人形劇、紙芝居などを行っていました。
47歳で昭和電工を退社してフリーになり、東京大学教育学部・東京都立大学人文学部・横浜国立大学教育学部・玉川学園女子短期大学・山梨大学教育学部での非常勤講師を務めつつ、『だるまちゃんとてんぐちゃん』や『からすのパンやさん』などのシリーズものをはじめ、科学者ならではの視点から幅広い分野で600点以上の作品を生み出しました。
漢字で書くと「加古 里子」ですが本名は中島 哲(なかじま さとし)さん。文学関連の賞を多数受賞している他、長年活動拠点としていた神奈川にて神奈川文化賞、川崎文化賞を受賞。出身地である福井県武生市(現:越前市)でも越前市文化功労賞を受賞しています。
深掘り情報
くまさかとらえもん先生のモデルは、全国で盗みを働き一度も捕まったことがなかったという平安時代の伝説上の盗賊、熊坂 長範(くまさか ちょうはん)。熊坂長範は舞や謡曲から始まり、浮世絵・歌舞伎・浄瑠璃・草双紙などにたびたび登場。棒や薙刀を振るう豪傑として描かれることが多いラスボス的存在で、最期は源義経(牛若丸)によって成敗されます。
2月20日は歌舞伎の日。
かこさとし『どろぼうがっこう』校長先生は歌舞伎役者のようなこの姿。
謡曲や浄瑠璃に登場する平安末期にいたとされる伝説の盗賊、熊坂長範(ちょうはん)をモデルにしています。 pic.twitter.com/N0jt18atvG— かこさとし【公式】 (@kakosatoshi_jp) February 18, 2024
なお、石川県加賀市熊坂にある熊坂長範出生地・熊坂長範屋敷や、岐阜県大垣市の熊坂物見の松跡など熊坂長範ゆかりの伝承地は多いですが、実在の人物かどうかは証明されていません。
浮世絵では月岡芳年の絵が有名。
盗賊の熊坂長範と戦う牛若丸。月岡芳年が描いた躍動感あふれる作品です。原宿の太田記念美術館で7/1から開催の「源平合戦から鎌倉へ-清盛・義経・頼朝」展で展示予定。https://t.co/uUluEidisS pic.twitter.com/p6PQcHzewv
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) June 3, 2022
身を守るために他の貝殻や石ころをたくさん身に着けるという珍しい習性を持つ”クマサカガイ”は、熊坂長範が七つ道具を背負っている姿に似ていることから名付けられたとされています。
クマサカガイは人生で出会った生き物の中でもかなり共感するわ。 pic.twitter.com/o1krienv53
— magineco (@ZRrKcYTGSNQPW6P) June 9, 2024
関連グッズ
特別展等でTシャツやポーチが販売されたことがあるようです。今後再版されることもあるかもしれません。
どろぼうがっこうTシャツとポーチ
ぬきあし、さしあし、しのびあし pic.twitter.com/SX5UHMn2QO
— Yuria / 吉住小貴ゆり (@pon_qyu_pon) September 4, 2022
関連施設
出身地の福井県越前市に、越前市が運営する「かこさとし ふるさと絵本館「砳」(かこさとし ふるさとえほんかん「らく」)」があります。
かこさとしさんの作品の原画などを展示する美術館、多数の絵本作家の作品閲覧が可能な図書館、遊戯室、読み聞かせや工作教室などに利用できる児童館を併せた複合施設です。
越前市にある「武生中央公園」(たけふちゅうおうこうえん)には、かこさとしさんが監修した「だるまちゃん広場」を中心にさまざまなキャラクターにちなんだスポットやアートがあります。
園内に設置されているかこさとしさんの紹介プレートには、くまさかとらえもん先生の姿も・・・。
作品の感想・口コミ
「昔の作品だけど、今読んでも古臭さを感じない。ユーモアは色あせないものだなぁと感じました。」
「ユーモラスなのに絵が怖い。自分もそうだったけど、子どもって”怖いもの見たさ”があるのでこういうのが好き。」
「破天荒なキャラだけど、端々に作者のどろぼうたちへの愛が感じられる。」
作品情報
書名 | どろぼうがっこう |
作者等 | 文・絵:かこさとし |
出版社 | 偕成社 |
発行年月 | 1973年03月 |