大人におすすめしたいエリナー・ファージョン~国際アンデルセン賞「作家賞」(1956)

エリナー・ファージョン (Eleanor Farjeon, 1881年2月13日 – 1965年6月5日)

エリナー・ファージョンは、イギリスの児童文学作家、詩人、作詞家で、優れた物語技法と温かみのある詩情で広く知られています。彼女の作品は、子供から大人まで楽しむことができ、日常の中に潜む魔法や、人間関係の温かさを描いたものを多く手掛けています。

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生涯と背景

  • 生い立ち
    エリナー・ファージョンは1881年、ロンドンで生まれました。父は人気小説家で、母は音楽家という芸術的な家庭で育ちました。彼女の家族は教育熱心で、幼い頃から文学や音楽、演劇に触れる環境にありました。

  • 創作活動の始まり
    彼女は幼い頃から物語を作るのが得意で、兄弟に語って聞かせることが楽しみでした。特に兄で劇作家のハーバート・ファージョンとは、創作活動を通じて深い絆を持ちました。

  • 作家活動
    エリナーは生涯を通じて多くの物語や詩、戯曲、エッセイを書き、特に児童文学の分野で高く評価されました。


代表作

  1. 『ムギと王様』

    • 英題:The King and the Corn
    • 短編集の一つで、彼女の代表的な作品。温かく詩的な語りが特徴で、1955年にカーネギー賞を受賞しました。
  2. 『リンゴ畑のマーティン・ピピン』

    • 英題:Martin Pippin in the Apple Orchard
    • 詩的な文章や、美しい物語構造が特徴的。寓話のような説話のような作品。
  3. 『街かどのジム』

    • 英題:JIM AT THE CORNER
    • 通りの角にあるベンチに座る年配の男性ジムが、地元の子どもたちに語る魅力的で想像力豊かな物語を描いています。詩的な文体と心温まる魅力的な物語。
  4. 『朝はどこから』 (Morning Has Broken)

    • 世界的に有名な賛美歌の歌詞を彼女が手掛けました。この歌は後にキャット・スティーヴンス(現:ユスフ・イスラム)が歌い、さらに広まりました。
  5. 『エリナー・ファージョン詩集』

    • 彼女の詩は、子供たちの感受性や想像力を育む温かさが特徴で、多くの学校で愛読されています。

受賞歴

  • ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞(1956年)
    初の受賞者として、児童文学への貢献が国際的に認められました。

  • カーネギー賞(1955年)
    The Little Bookroom(『ムギと王様』収録)で受賞。

  • その他
    彼女の業績を称えるために、イギリスでは「エリナー・ファージョン文学賞」が設立されています。


作風と影響

エリナー・ファージョンの物語は、古き良きイギリスの田園風景や日常の中の温かさを基盤に、幻想的な要素を取り入れています。彼女の作品には、心の純粋さや人間の優しさ、自然の美しさが描かれており、読み手に希望や感動を与える力があります。

彼女のスタイルは、後の児童文学作家たちにも大きな影響を与え、イギリス児童文学の伝統の中で重要な役割を果たしました。


『ムギと王様』(原題:The King and the Corn)

物語の主人公はウィリーという少年。彼は村の校長先生の息子で、幼い頃は本好きで天才と評されるほど聡明な子供でした。しかし、10歳を過ぎると次第に本を読まなくなり、無口になっていきます。それでも、時折話し始めると驚くほど熱心に語り続けることがありました。

数年後、村を訪れたある少女が成長したウィリーと出会います。そのとき、ウィリーは彼が育てている麦畑で起こった不思議な出来事について話し始めます。彼の話は、エジプトの王さまとムギにまつわる幻想的な体験を中心に展開され、聞く者を夢のような世界へと誘います。

この短編集には他にも「月がほしいと王女さまが泣いた」「ヤング・ケート」「金魚」「レモン色の子犬」など、多彩で魅力的な物語が収められています。


『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(原題:Martin Pippin in the Apple Orchard)

物語の舞台は、穏やかなイギリスの田園地方。旅する吟遊詩人のマーティン・ピピンは、ある日、悲しみに暮れる若い羊飼いのロビン・アコーンに出会います。ロビンは恋人のジリアンを救うため、マーティンに助けを求めます。

ロビンはジリアンという女性を愛していますが、彼女の父親に反対され、ジリアンはリンゴ畑の真ん中にある井戸小屋に閉じ込められています。その小屋は6人の頑固で疑り深い乳しぼり女たちによって守られており、彼女たちを説得しない限り、ロビンはジリアンに会うことができません。

マーティンはロビンを助けることを決意し、乳しぼり女たちの心を開くために彼女たちそれぞれに物語を語ります。これらの物語は愛や人生、人間関係についての深い洞察を含んでおり、それぞれの女性の性格や考え方に寄り添っており、次のような6つの物語でした。

  1. 自己発見の物語:一人の乳しぼり女が自分らしさを見つけるきっかけとなる話。
  2. 許しの物語:過去のわだかまりを乗り越え、許しの大切さを教える話。
  3. 恋愛の寓話:愛の喜びや困難を描いた、ロマンチックな物語。
  4. 勇気の物語:大切なもののためにリスクを冒すことの価値を示す話。
  5. 冒険と楽しさの物語:今この瞬間を楽しむことの大切さを祝う話。
  6. 哲学的な寓話:人生や愛の循環する本質を考えさせる物語。

マーティンの語る物語を通じて、乳しぼり女たちは心を開き、自分自身を見つめ直すようになります。

マーティンが乳しぼり女たちを説得すると、彼女たちはロビンとジリアンが再会するのを許します。物語は愛がさまざまな形で勝利する希望に満ちた結末を迎えます。マーティン自身もまた、旅を通じて自分の目的や生きる意義を見出していきます。


『街かどのジム』(原題:JIM AT THE CORNER)

物語の中心となるのは、街角のベンチにいつも座っている年老いた男性ジムです。彼は地元の子どもたちにとっておなじみの存在で、その鮮やかな語りに引き寄せられた子どもたちは、毎日のように彼のもとを訪れます。

ジムが語る話は、遠い国々や不思議なキャラクター、驚くべき冒険についてのもので、子どもたちの想像力をかき立てます。ジムの語る物語はどれも独立しており、それぞれユニークなキャラクターやプロットを持っています。物語には時折、教訓的な要素が含まれ、聞き手に深く考えさせるような内容もあります。

ジムの話が本当に彼自身の体験なのか、それとも彼の豊かな想像力の産物なのかは明らかにされません。この神秘性が物語に特別な魅力を与えています。


おわりに:エリナー・ファージョンの魅力

エリナー・ファージョンは、子供の視点を大切にしつつ、大人にも深い感動を与える作品を生み出しました。その物語は、どこか懐かしく、親しみやすい魅力で多くの読者を魅了しています。

彼女の作品は、今でも児童文学の名作として愛され続けています。

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