大人におすすめしたいマインダート・ディヤング(アメリカ)~国際アンデルセン賞 「作家賞」(1962)

マインダート・ディヤング (Meindert De Jong, 1906年3月4日 – 1991年7月16日)

マインダート・ディヤングは、オランダ生まれのアメリカ人児童文学作家で、心温まる物語を多く生み出し、世界中で愛されています。彼の作品は、子どもたちの純粋な視点や冒険心を描きながら、友情や家族の絆といった普遍的なテーマを伝えています。特に、自然や動物、文化的背景を通じて人間の本質を探る作風が特徴的です。

生い立ちと背景

  • 出生と移住
    マインダート・ディヤングは、1906年にオランダのフリースラント州ウィールムで生まれました。1914年、8歳のときに家族とともにアメリカへ移住し、ミシガン州に定住しました。

  • 教育と執筆への道
    ミシガン州で育ったディヤングは、カレッジで学んだ後、農業や様々な職業に従事しながら執筆活動を始めました。彼の幼少期のオランダでの生活と、アメリカ移住後の体験が作品の背景に色濃く反映されています。


作家としての業績

ディヤングの作品は、自然や動物、子どもたちの日常を丁寧に描き、読者に深い感動を与えるものでした。彼の物語は、子どもたちの冒険や成長を通じて、人間関係や人生の価値について問いかけます。


代表作

    1. 『コウノトリと六人の子どもたち』 (The Wheel on the School)

      • 小さなオランダの村で、子どもたちがコウノトリの巣を作るために協力する心温まる物語。1955年にニューベリー賞を受賞しました。
    2. 『六十人のおとうさんの家』 (The House of Sixty Fathers)

      • 第二次世界大戦中の中国を舞台に、少年とペットの豚が家族を探す感動的な冒険物語。
    3. 『丘はうたう』 (Along Came a Dog)

      • 犬と農場の人々との絆を描いた作品で、動物との関わりの温かさが表現されています。
    4. 『ぼくの黒うさぎシャデラク』 (Shadrach)

      • 少年と彼の特別なうさぎの物語で、友情とペットへの愛情がテーマになっています。
    5. 『青い目のネコと魔女をおえ』 (The Blue Cat of Castle Town)

      • 中世ヨーロッパを舞台にした寓話的な物語です。人間の迷信や恐怖、無知が引き起こす悲劇を背景に、勇気と慈悲の力がいかに重要であるかを伝える感動的な物語です。

受賞歴と評価

  • ニューベリー賞
    『コウノトリと六人の子どもたち』で受賞し、その物語性とメッセージが高く評価されました。

  • 国際アンデルセン賞作家賞 (1962年)
    世界的に児童文学への貢献が認められ、最も権威ある賞の一つを受賞しました。

  • ドイツ児童文学賞 (1957年)
    『コウノトリと六人の子どもたち』が受賞し、国際的にも認められました。


作風とテーマ

  1. 自然と人間の調和
    自然や動物が多くの作品で重要な役割を果たし、読者に人間と自然の共生を教えています。

  2. 子どもの視点
    子どもたちの無垢で好奇心旺盛な視点を通じて、読者に感動と学びを提供しています。

  3. 文化と歴史の反映
    オランダやアメリカ、さらには戦争中の中国など、ディヤングの体験や知識が物語に深みを与えています。


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『コウノトリと六人の子どもたち』 (原題: The Wheel on the School)

物語の舞台は、オランダの海に近い小さな村、シュローデルバイクです。この村では、昔はよくコウノトリが巣を作っていましたが、長い間コウノトリが戻ってきていません。村の子どもたち6人は、それぞれ個性豊かで仲良しです。

主人公の少女リナは、学校の授業中に「なぜ村にコウノトリが来なくなったのだろう?」と疑問を持ちます。この話題をきっかけに、子どもたちはコウノトリの巣を再び村に作らせる方法を考えるようになります。

子どもたちは、コウノトリが巣を作りやすい環境を整えるため、村中で協力を募ります。巣の土台になる大きな車輪を探す必要があることがわかり、彼らは村の大人たちに話を持ちかけます。

子どもたちはそれぞれの役割を果たしながら、村中を駆け回ります。古い車輪を探し、木の上に巣を設置するための準備を進めます。この過程で、村の住民たちが少しずつ子どもたちの計画に共感し、協力を申し出るようになります。

彼らの努力は冒険に満ちており、時には失敗や困難にも直面します。それでも、子どもたちは諦めずにアイデアを出し合い、協力して問題を解決します。

計画を進める中で、村全体が子どもたちの取り組みに感化され、久しぶりに一体感を取り戻します。大人たちも、子どもたちの純粋な熱意と自然への愛情を見て、積極的に支援をするようになります。

ついに、村に巣を設置する準備が整います。子どもたちは息を飲んで、コウノトリがその巣を気に入ってくれるかを見守ります。長い時間が経った後、ついにコウノトリが村に戻ってきて、巣を使い始めます。この瞬間、子どもたちも村人たちも歓喜に包まれます。

『六十人のおとうさんの家』 (原題: The House of Sixty Fathers)

ティエ・ワンは、中国の農村で両親と妹と共に暮らしている少年です。戦争中の混乱の中、彼らは日本軍の攻撃を受け、村を追われることになります。家族と共に安全な場所を目指して避難する途中、彼らは大きな川を渡らなければならなくなります。

川を渡る際に大きな事故が起き、ティエ・ワンは家族とはぐれてしまいます。流れの激しい川に流されながらも、彼はペットの豚「グローリー・オブ・ザ・モーニング」と共に命を取り留めます。

ティエ・ワンは家族を探すため、一人で過酷な旅に出ます。戦争で荒廃した土地をさまよいながら、彼は飢えや孤独、恐怖と戦います。その中で、戦争の悲惨さを目の当たりにしながらも、人間の温かさに触れることになります。

旅の途中、ティエ・ワンはアメリカ兵の部隊に出会います。この部隊には約60人の兵士がいて、彼らはティエ・ワンの状況を知り、彼を助けることを決意します。兵士たちはティエ・ワンに親切に接し、「六十人のおとうさん」として彼を守り、彼の旅を支援します。

アメリカ兵たちの助けを得て、ティエ・ワンは困難を乗り越え、ついに家族と再会することができます。この感動的な再会は、戦争の暗い現実の中で希望の光を象徴しています。

『青い目のネコと魔女をおえ』 (原題: The Blue Cat of Castle Town)

物語は、中世の小さな村で暮らす一人の賢いおばあさんから始まります。おばあさんは村の外れの墓地近くでひっそりと暮らし、青い目のネコとカササギを飼っています。青い目の白ネコは、その美しさと知性で特別な存在として描かれています。

おばあさんは、優れた知恵と慈悲の心を持ち、困っている動物や人々を助けることを喜びとしていました。しかし、迷信深い村人たちは、彼女の暮らしぶりや動物との親しい関係を「異常」とみなし、次第に彼女を魔女と疑い始めます。

ある日、村に悲劇が続きます。

  • 子どもたちの間に病気が流行し、次々と倒れる。
  • 村の市長の赤ん坊が嵐の夜に行方不明になる。

これらの不幸は、恐怖と混乱に包まれた村人たちをさらに迷信的にさせます。そして、村人たちはこれらの不幸の原因をおばあさんに押し付け、彼女が魔力を使ったせいだと決めつけます。

村人たちはおばあさんを捕らえ、裁判もろくにせず、火あぶりに処そうとします。絶望的な状況の中、彼女の青い目のネコは勇敢にも行動を起こし、村の子どもたちや一部の大人たちを説得しようとします。

最終的に、青い目のネコとカササギの活躍、そしておばあさんの知恵と勇気によって、赤ん坊の行方や村に起こった不幸の真実が明らかになります。それらは魔女の仕業ではなく、偶然の出来事や自然現象によるものであることが判明します。

おばあさんの潔白が証明され、村人たちは自分たちの誤りを悟ります。物語は、村人たちが恐怖と迷信を克服し、心の平和を取り戻す姿で幕を閉じます。

おわりに:マインダート・ディヤングの魅力

マインダート・ディヤングは、児童文学の分野で大きな影響を与えました。彼の作品は、子どもたちに勇気や思いやり、自然への敬意を教えるだけでなく、大人にも深い感動を与える普遍的なテーマを扱っています。彼の物語は現在も多くの国で愛され続けています。

彼の作品を通じて伝えられるメッセージは、「人間らしさ」と「共感」の重要性であり、それは今なお、私たちにとって大切な教訓です。

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