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大人におすすめの「人形からとどいた手紙ーベルリンのカフカ」/きみ子さんのイチオシ絵本

大人にこそおすすめしたい絵本。その一つが『人形からとどいた手紙ーベルリンのカフカ』という作品です。

絵もストーリーもとっても感慨深くて、私のお気に入りの一冊になりました。カフカのこの逸話は私は知らなかったけれど、知ってる人は知っている有名な話だったみたい。
独特な絵がとってもかわいくて飾っておきたいほどです。

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このページの目次

ストーリー

1923年の秋、カフカは公園で、人形をなくして泣いている女の子と出会います。イルマと名乗るその少女に「人形はちょっと旅にでたんだ」と言ってなぐさめるカフカ。そして自らを”人形からの手紙を受け渡す配達人”であると伝え、翌日から公園のベンチでイルマに、人形になり切ってカフカ自身が書いた手紙を渡しはじめます。

人形からの手紙を受け取り、喜んだり心配したりするイルマ。でも手紙の中の人形の旅先は次第次第に遠いところへ行き、ついには北極へ・・・。

と同時に、もともと体を壊していたカフカの人生も残りわずかとなっていきます。

人生の終わりを悟ったカフカが人形の手紙を通して少女に伝えたかったこととは・・・。

作品について

『変身』『審判』など独自の視点で書かれた作品で知られ、”20世紀の文学を代表する作家”と言われているフランツ・カフカの実話をもとにした物語です。

カフカの知られざる人柄が見える、優しさと希望に溢れた逸話です。以前より「カフカと人形」として村上春樹が小説内で語ったり、インターネット上でカフカの逸話として紹介されていた内容とは結末が異なるようです。

作者について

文:ラリッサ・トゥーリー

子ども向けのフィクション・ノンフィクションの本を手掛けるラリッサ・トゥーリー。ナイジェリア、インディアナ、日本、コスタリカ、カナダ、ミシガン、マサチューセッツ、ニューヨーク、オレゴン、中国に住んだ経験があり、現在は南カリフォルニアに在住。

絵:レベッカ・グリーン

レベッカ・グリーンはアメリカで活躍しているイラストレーターで作家・画家です。「様式化された質感のある作風」「視覚的に心地よいイラスト」「中世の芸術作品のよう」などメディアから高い評価を受けており、注目されています。

10冊以上の作品に挿絵を描いている他、執筆と挿絵を担当した作品として『おばけと友だちになる方法』があります。

訳:野坂悦子

野坂悦子(のざか えつこ)さんはオランダ語、英語、フランス語などの児童書・絵本を翻訳している翻訳家です。国内では『おじいちゃん わすれないよ』(金の星社)で第50回(2003年)産経児童出版文化賞大賞を受賞しています。

絵本や紙芝居の執筆も手掛け、『ロロとレレのほしのはな』『あしたの動物園: 熊本市動植物園のおはなし (未来への記憶)』などの著書があります。

深掘り情報

「カフカと人形」の逸話は2003年に村上春樹さんが月刊誌「文藝界」のインタビュー記事の中で紹介しており、これが国内で広く知られるきっかけになったと言われています。

また、ポール・オースターが2020年に発表した小説「ブルックリン・フォリーズ」にも、主人公ネイサンが甥のトムに聞かせる話として登場します。

もともとはカフカの最期を看取った恋人のドーラ・ディアマントが記した回想録「フランツ・カフカとの生活」に登場する想い出話で、ドーラ曰く「フランツはひとりの子供の小さな葛藤を芸術の技法によって解決した」のだそう。

この逸話では人形からの最後の手紙の内容は、人形が”結婚”をすることになって少女に別れを告げるという幸せなエンドで締めくくられるのですが、ラリッサ・トゥーリーは現代の価値観に合わせて人形を南極探検へと送り出しました。

ドーラの回想録を「カフカと人形」として物語の形にまとめたのは、スペインの作家ジョルディ・シエラ・イ・ファブラが最初。その時に書かれた物語では、カフカが最後の日に少女に新しい人形をプレゼントしたことになっています。

内容は次の通り。

カフカは、少女と最後に会ったときに、人形を1つ手渡し、それに手紙も添えました。彼はその人形が、少女が失くしたものと同じに見えないことは百も承知だったので、手紙には「わたし、旅をしたことで、変わったんです」と書かれていました。少女はその贈り物を、その後ずっと大事にしました。そして数十年後、その代用の人形に、見落としていた割れ目があり、その中に、もう1つの手紙が詰め込まれていることに気づきました。その手紙には、「きみは、いずれは大好きなものをすべて失うことになるでしょう。でもね、結局のところ、『大好きなもの』は別の形になって戻ってくるんです」と書かれていました。

カフカから手紙を受け取った少女が実際誰だったのかを調べる試みは何度か行われたそうですが、結局見つからないまま。逸話の最後が実際のところどうだったのか、代用の人形をもらったのが本当なのか、現在では知るすべがありません。

関連グッズ・関連施設

関連施設はありません。

作品の感想・口コミ

「手紙が現存しないだけに想像を膨らませることができる。カフカの作品を読みたくなった。」

「絵が魅力的。エンドは結婚でも南極でもどちらでも構わないと思う。少女が納得できれば。」

「少女が手紙を通じて悲しみを癒され、成長していったのだとすれば、やはりペンの力は偉大だと思います。」

作品情報

書名 人形からとどいた手紙ーベルリンのカフカ
作者等 文:ラリッサ・トゥーリー
絵:レベッカ・グリーン
訳:野坂悦子
出版社 化学同人
発行年月 2023年11月

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