そんな言葉が昔ありました。
恋愛をしている時の高揚感や多幸感は、突き詰めれば体内で産生されるホルモンの作用によるものだそうで、確かにこの言葉通りかもしれません。
幸せや喜びを感じたり、やる気を起こさせたりするホルモンのことを巷では「幸せホルモン」と呼んでいますが、このホルモンは残念ながら加齢に従い分泌が弱まっていくものです。
中高年の私たちにとって幸せホルモンをいかに維持していくかという問題は、健康な生活を営む上での重大なポイントとなります。
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幸せホルモンの種類
人間の脳内で幸せホルモン(幸せを感じさせる働きをするホルモン)として作用するものには、次の3つがあると考えられています。
この3つのホルモンは、それぞれ異なるアプローチで人を幸せな気分にしてくれます。
セロトニン
セロトニンの役割は次のようなものだと考えられています。
・ホルモンバランスの正常維持。
・睡眠からの覚醒。
・痛みの緩和。
・認知力や行動力などを司る前頭葉のサポート。
うつ病を発症した場合、脳内のセロトニンの減少がみられる場合が多いそうです。
ドーパミン
ドーパミン(ドパミン)は次のような働きがあるとされています。
・物事に対する意欲を高める。
・運動能力の調節を行う。
・食欲を抑制する。
ドーパミンが不足すると、意欲の減退や運動機能の低下、抑うつ感、不安感などの症状が出ます。疲労感や倦怠感、集中力の低下などが見られることもあり、うつ傾向になることもあるので注意が必要です。
パーキンソン病を発症すると、脳内のドーパミンの量が著しく低下することが知られています。
近年はドーパミンを摂取するためのサプリメントも市販されています。
β-エンドルフィン
βーエンドルフィンは人間本来の欲求が満たされることで分泌されると考えられており、喜びを感じさせ、痛みを抑える働きがあるため、脳内麻薬とも呼ばれています。
本来の欲求とは食欲、睡眠欲、生存欲などのことで、これらが満たされた時に報酬のように分泌されます。頻繁には放出されず、極度の興奮や快感を覚えた時や美味しいものを食べた時、あるいはその逆で極度のストレスや苦痛に襲われた時など極限状態の時に多く分泌されます。
マラソンランナーが走行中に苦痛の限界を越えて快感を感じることをランナーズハイと言いますが、これにはβーエンドルフィンが深く関わっていると言われています。
これらの幸せホルモンを脳内にどんどん注入すれば、いつでも幸せな気分でいられると考えられます。でも実際には難しいため、研究者たちは代わりに幸せホルモンの分泌を促進させる方法というものを探っています。
幸せホルモンを増やすには?
幸せホルモンを増やすにはどうしたらいいのでしょうか。ホルモン注射をすればいいのでしょうか。
どうやら、そのようなことでは幸せホルモンは増えないようです。摂取方法には次のようなものがあります。
食品から摂取する
脳内でセロトニンが分泌されるためには必須アミノ酸の1つであるトリプトファンとビタミンB 6が必要です。まずはこれらの栄養素が無ければ話になりません。
トリプトファンはタンパク質に含まれていますから、良質のタンパク質を適量摂取することがもっとも簡単な方法になります。同時にビタミンB6を摂取するために、
にんにく、とうがらし、ごま、ピスタチオ
といった香辛料的なものを一緒に摂取する必要があります。
ちなみにマグロはトリプトファンもビタミンB6も豊富なので、手っ取り早く摂取したい人には最適の食品です。
ドーパミンやβ-エンドルフィンの場合は、材料としてチロシンが使われます。
チロシンも動物性タンパク質や大豆などに含まれているアミノ酸ですから、トリプトファンと同様に、良質のたんぱく質を摂取することが大切です。また、
シイタケや枝豆、アボカド、アーモンド、緑黄色野菜、海藻類
などにもチロシンが含まれているので、これらの食品も積極的に摂ることをおすすめします。
日頃からいろいろな食品を偏りなく食べるように心がけていれば、知らず知らずのうちに摂取できているものだといいます。同じものばかり食べている人は、食生活のバリエーションを広げる努力から始めましょう。
適度な運動
健康について考える時、必ず登場するのが「適度な運動」です。ホルモンの分泌を促進するのもまた、適度に運動負荷のある有酸素運動だと考えられています。
ルール性の高いスポーツよりもランニングや水泳、サイクリングのような種目の方が、ホルモン分泌の促進に向いていると言われています。勝ち負けのあるものや規則のあるものの場合、脳が疲労してしまう可能性があるからです。
脳に刺激を与える
美しいものを観たり、誰かと楽しい時間を共有したり、新鮮な風景に巡り合ったりすることで脳が刺激を受けると、ホルモンの産生も活発になります。
刺激を与え続けることは脳の老化を防ぐのにも役立ちます。
「恋をしたら身体の不調がなくなった」「子犬を飼うようになったら気うつが治った」
といった事例が見られるのも、脳の活性によるホルモン分泌が影響していると考えられます。
なお、セロトニンやドーパミン、エンドルフィンなどのホルモン物質自体は、直接投与したとしても脳まで到達しないそうです。
脳は最重要器官であるため、血液脳関門というゲートを通過した物質しか入れません。トリプトファンなどホルモンの元となる物質は通過できても、ホルモン物質は分子構造的な理由で通過できない仕組みになっています。これではホルモンを直接摂取しても役には立ちません。
食事や生活習慣の見直しや生活の質を高める工夫をするのが一番の方法と言えそうです。
おすすめの外食は・・・大人気のあれ!
幸せホルモンのもとになるトリプトファンやビタミンB6、チロシンなどを比較的摂取しやすいおすすめの外食があります。
それは「回転寿司」です。
マグロにはトリプトファンやビタミンB6が多い上、中トロや大トロ1貫には成人が1日に摂取すべきDHAとEPAが含まれているとのこと。
ドーパミンやβーエンドルフィンのもとになるチロシンはアボカド、海藻類に多く含まれているので、えびアボカドやサイドメニューのあおさ汁などがおすすめです。
また、イワシやアジなどの青魚にもオメガ3系脂肪酸が多く含まれており、こちらもDHAとEPAを摂取するのに最適です。
回転寿司で楽しく美味しく食べることで、心身ともに幸せになれるわけですから言うことはありませんね。
まとめ
規則正しい生活習慣、栄養バランスのとれた食事、充実した毎日を過ごすことで、いつまでも幸せホルモンの分泌が続き、元気な生活を送ることができる・・・。
これは口で言うほど簡単なことではありませんね。できない人が多いがゆえに、心身両面で病気になる人が多発するわけです。
それでもやはり、できることから実行に移していくことで少しづつでもよりよい生活習慣に近づけていくべきだと思います。
「幸せは身近にある」というおとぎ話の言葉ではありませんが、生活習慣を見直して、摂るべきものを摂り、するべきことをする、というのが幸せホルモンの分泌を促す一番の近道であることは間違いありません。